核酸医薬基礎

核酸医薬: RNAやDNAを原料にした医薬品。遺伝子の働きを特異的に抑えることによって効果を示す。ヒト遺伝子のDNA配列が明らかになって、従来にない新しいタイプの薬として今後の開発が期待されている。現在は次のことに取り組んでいる。

1.本研究室独自のshRNA探索システムを利用して、新しい核酸医薬候補をスクリーニングする。対象はがん細胞のミトコンドリア膜電位に関わる現象、細胞膜酸化、細胞分裂か、細胞老化の各現象に影響する遺伝子。

2.本研究室が発見した新規な機能タンパク質TMEM117の解明と、それに基づいた既成の試薬等の薬効の再評価

当研究室の過去の取り組み: 

1.核酸医薬の候補として、様々な配列をもつRNAを作製する技術を開発した。その基礎技術として遺伝子工学を利用した。このRNAは有効性の有無を評価されるので、種類が多いほど良い。研究室でのトレーニングによって誰でも数万種類の新しい核酸を効率的に合成できることが特徴。その合成のカギのとなる構造がループ・ステム・ループDNA。

2.様々な配列のRNAの中から有効な核酸配列を見つけるために、培養細胞を使用した高効率な探索システムを作った。合成するRNAとしては何十万種類にもなるので、これを1つ1つ評価するのでは時間が足りないし、効率が極めて悪い。そこでひとまとめにして、RNAを約100万個の培養細胞に作用させ、効果の有無を1細胞ごとに評価するシステムにした。その基盤技術として、再生医学でも用いられているセルソーターを活用したことが特徴。評価に利用する蛍光試薬を交換することによって、生細胞の様々な活動の様子を計測する。我々はがん細胞のアポトーシス(細胞が自ら死ぬという現象)を誘導する核酸を見つけて、それが全くの新しい機能分子であることを証明している。

3.探索によって発見した有効な塩基配列を解析するために、専用のウェブツールを開発した。本システムは解析したい塩基配列を入力するだけで、子細胞生物学の研究者が必要とする結果をレポート形式で出力する。ウェブツールSPICEは当研究室の大学院生が開発したものであり、公開している。研究利用に限らず、本学の教育用教材として、学生実験で利用している。